羽を休める場所で、一歩ずつ飛び立つ準備を

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取材日:2026.02.13

数字ではなく、「人」と向き合う教育がしたい

数字ではなく、「人」と向き合う教育がしたい

私は北海道の利尻島で生まれ育ちました。当時は島に学習塾など一つもありません。だからこそ、放課後は友人と集まって、分からない箇所を教え合うことが日常でした。その中で気付いたのは「教えることは一方通行ではない」という楽しさです。友人に説明しようとすると、「自分は分かったつもりになっていたんだ」と気付かされる。互いに補い合い、一緒に理解を深めていく過程が何よりも面白かったんです。これが、私の教師としての原点です。

また、中学校の教頭として誰よりも熱く生徒を思う父の姿を間近で見てきたため、「教えること」を仕事にしたいと思うようになりました。

しかし、以前勤めていた学習塾は利益重視。入塾者数や進学実績などの数字ばかりを求められていました。次に勤めた全日制高校は進路重視。より良い大学へ進学させるために、生徒の感情を置き去りにしているように感じ、ジレンマを抱えていました。

成績という数字だけでなく、一人の人間として生徒に深く向き合い、一歩ずつ成長する姿を支えたい。そうしてたどり着いたのが通信制高校です。中でも、黒板を使った対面授業を大切にするわせがく高等学校に入職しました。少人数でしっかりと温度のある言葉を交わすアットホームな環境。それこそが、私がまさに求めていた教育の形だったんです。

通信制高校は、羽を休める場所

本校に入学してくる生徒には不登校経験者も多くいます。過去の経験から「一人で何かをすること」に強い不安を持つ生徒も多く、そんな傷ついた羽を抱えてやってくる生徒たちに、いきなり「頑張れ」とは言いません。

私が何より大切にしているのは、まずはここを「羽を休める場所」だと感じ、安心してもらうことです。焦って勉強を詰め込む必要はありません。安心して過ごせる場所があって初めて、エネルギーを蓄えられるからです。

ただ、通信制高校という環境は、多くの生徒がこれまで過ごしてきた中学校や全日制高校とは仕組みも雰囲気も異なります。「本当にやっていけるだろうか」と大きな不安を抱えて入学してくるのが実情です。だからこそ私は、入学前後の時期にこの新しい環境で心から安心できるよう、一つひとつの不安を解消する支援を大切にしています。

例えば、生徒にとって最大の不安は「友達ができるか」ということです。そのため、入学前のプレスクールでは、大人でも緊張するような自己紹介は一切させません。代わりに「最寄り駅が近い子」を集め、自然と行き帰りの会話が生まれるような小さな共通点探しから始め、安心して友達づくりができる環境を整えています。さらに、先輩たちが部活や授業、レポートの進め方などのレクチャーもしてくれるので、学校生活への不安も解消されます。不安を感じている生徒は傷ついた羽を休め、安心できる場所だと感じてから、本人のペースに合わせてステップを踏んでいけばいいのです。

また、通学して教室で対面授業を受けることに強い不安を感じる生徒もいます。もし自宅が本人にとって一番安心できる場所なのであれば、まずは無理に通学せず、心を休めながらオンライン学習から始めればいいのです。

自宅でリラックスして課題に取り組み、少しずつエネルギーが蓄えられてくると、自然と「学校に行ってみようかな」「誰かと話してみたいな」という気持ちが芽生えてきます。そうやって不安が和らぎ、外の世界へ向かう準備が整ったタイミングで、対面での活動を増やせるようにしています。

自信がついてきたら行事の実行委員会への参加を促すなど、徐々にできることを増やしていきます。安心できる場所を用意し、適切なステップで成長できるよう、背中を押してあげることが私の役割です。

羽を休めてエネルギーを蓄えよう

羽を休めてエネルギーを蓄えよう

今、学校選びに迷っているなら、まずは「通信制高校=羽を休める場所」だと知って頂きたいです。焦る必要はありません。ここでたっぷりと羽を休め、エネルギーを蓄えてください。そうすれば少しずつ自分の力で動き出せるようになり、やがては「社会へ飛び立つ力」を身に付けていけるようになります。

今は不安でいっぱいでも大丈夫です。皆さんがいつか見せてくれる笑顔を、私は何よりも楽しみに待っています。不安なことがあれば、いつでも頼ってください。安心して過ごせる居場所で、一緒に社会へ飛び立つ準備をしていきましょう。

小林 紀子
通信制高校

学校法人早稲田学園 わせがく高等学校 柏キャンパス

センター長、教務主任、2年次全日型・通学型担任

小林 紀子

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