高等学校等就学支援金(高校学費無償化)をわかりやすく解説

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高等学校等就学支援金

「高等学校等就学支援金」とは、高等学校の授業料に対して国が就学支援金を支給してくれる制度です。この制度によって各家庭の教育にかかる経済的負担を軽減し、教育の実質的な機会均等を図ることを目的としています。支給されるのは世帯年収が910万円以下の家庭で、世帯年収が590万円未満の場合、年間授業料が20万円以下なら授業料は実質無料となります。これが、いわゆる高校無償化です。(※世帯年収590万円、910万円というのは一つの目安で、家族構成なども考慮して判定されます)
就学支援金は公立・私立の通信制高校の生徒にも適用されますが、支援金を受け取れるのは3年間だけです。通信制高校は3年間で卒業できなくても4年以上在籍することが可能ですが、4年目からは全額自己負担になります。また、就学支援金はあくまでも授業料に対して支給され、学費の総額をカバーするものではありません。
家計をサポートしてくれる制度として、高等学校等就学支援金以外にも「高校生等奨学給付金」、保護者の失職時などに受け取れる「家計急変への支援」、中途退学者向けの「学び直しへの支援」、各都道府県が独自に実施する「高等学校等奨学金等」などがあります。高校在学中に親が勤めている会社が倒産した場合なども配慮されているので、何かあった時は通信制高校の先生に相談してください。

高等学校等就学支援金制度:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm

高等学校等就学支援金のシミュレーションや確認方法

通信制高校の学費は入学金、授業料、施設費などで構成され、そのうちの授業料に高等学校等就学支援金が支給されます。通信制高校の場合、授業は1単位:7,000~12,000円です。卒業するには3年間で74単位を修得しなければならず、1年次:25単位、2年次:25単位、3年次:24単位、というように履修していきます。例えば、年間で25単位を修得するのなら「7,000~12,000円×25単位=175,000~300,000円」となり、年間の授業料は175,000~300,000円。この金額に就学支援金が支給されることになります。
就学支援金の支給額は世帯年収をベースに計算され、世帯年収が「590万円未満」、「590万円以上~910万円未満」、「910万円以上」で支給額が変わります。

就学支援金
世帯年収 適応範囲 授業料の負担
590万円未満 25単位で20万円支給 年間授業料が20万円以下なら実質無料
590~910万円 1単位につき4,812円(定額)引かれ、差額が自己負担 1単位の授業料が7,000円なら2,188円が自己負担、
25単位の場合は54,700円を負担
910万円以上 就学支援金の対象外 全額自己負担

厳密には、「市町村民税の所得割の課税標準額(課税所得額)×6% - 市町村民税の調整控除の額」という計算式が適用され、この算出額が154,500円未満(年収目安590万円未満)であれば396,000円が支給されて年間の授業料は実質無償となります。そして、算出額が154,500円以上304,200円未満(年収目安910万円未満)であれば基準額の118,800円が支給され、差額が自己負担となります。算出額が304,200円以上(年収目安910万円以上)では就学支援金は支給されません。
就学支援金がいくら支給されるのかすぐに知りたい場合は、課税証明書で「市町村民税の所得割の課税標準額」と「市町村民税の調整控除額」を確認して上記の計算式に当てはめれば算出できます。ただし、市町村によっては課税証明書に記載されていないケースもあるので、その際はマイナポータルで確認してください。

通信制高校のオプションやサポート校に費用は対象外

通信制高校のオプションやサポート校に費用は対象外

通信制高校の学費については、事前に理解しておかなければならないポイントがあります。それは、大学進学や特別なスキルを学ぶための専門コースを選んだり、通常のサポートよりも手厚いサポートを求める場合は別途費用がかかることです。授業料に組み込まれていないため、就学支援金を適用することもできません。
「なぜ別途費用になるのか」と疑問に感じる方もいるでしょうが、これには通信制高校の特性が関係しています。通信制高校には週5日登校するコースもあれば、オンラインで学ぶネットコースもあります。不登校の支援を求める生徒もいれば、修学旅行などのイベントに積極的に参加したい生徒もいます。生徒によって通信制高校に求めるものや必要なサポートが異なるため共通の学費を設定することができず、諸々のサポートはオプションという扱いになっているのです。生徒の学習面や生活面をケアするサポート校も同様の扱いになっており、サポート校に通う場合は通信制高校とは別にサポート校の費用が発生し、サポート校に就学支援金を適用することはできません。
家計への負担を考えると学費を安く抑えたいと考えるのは当然のことです。まずは高卒資格を取るために生徒にどのようなサポートが必要なのか整理し、その上でオプションをつけるのか、サポート校を活用するのが良いのか考えてみましょう。オプションやサポート校にかかる費用がわかれば学費の総額を把握でき、家計と相談して取捨選択ができるようになります。

岩田 彰人
教育メディア

株式会社プレマシード

教育メディアクリエイター

岩田 彰人

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