通信制高校に普通の子が入学することについて

PICKUP

解説動画はこちら

通信制高校には普通の子はいないのか

保護者の方は自分の高校時代を思い返すと、「通信制高校って普通の子はいないんじゃないの?」と思うかもしれません。あるいは、通信制高校に通うことによって「普通な子ではなくなってしまうのでは…」と不安になるかもしれません。確かに、20~30年前の通信制高校は高卒資格を取りたい社会人と全日制高校を退学になった生徒の受け皿になっていました。通信制高校の生徒数もいまほど多くなく、通信制高校に通っている友達がいなければ交流もないため、どこか怖い印象があったかもしれません。
しかし、そんな保護者の方にこそ複数の通信制高校を見学してほしいと思います。現在の通信制高校は生徒の要望に応えながらアップデートを重ね、好きなことを学べる、さまざまな課外活動を行う、同級生の友達が普通にできる学校に変貌しています。
保護者の方が経験した全日制高校とは異なるかもしれないが、見学時には多くの生徒の笑顔を目の当たりにし、多様な高校生活があることを知れるはずです。集団生活が苦手で不登校を経験したものの、通信制高校で学校に通えるようになり同級生と一緒に授業や課外活動を受ける生徒。進学校や中高一貫で勉強についていけなくなったけど、もう一度大学受験に向けて頑張っている生徒。勉強は苦手でも得意なプログラムを学んでいる生徒。一言で高校生と言っても、こんなにいろいろな生徒がいるのかと改めて気付くはずです。
全日制高校にはない多様な学びの中で、生徒の個性を受け止める。そんな通信制高校を知れば、「ここにも普通の子しかいない」と思うでしょう。

通信制高校には普通の子はいないのか

通信制高校に入学することは人生終わり

「通信制高校に入学すると人生終わり」とネット上で言われることがあります。しかし、実際には多くの通信制高校で難関大学への進学実績があり、通信制高校から大学に進学する生徒は年々増加しています。その理由は、大学受験の選抜方法が変化しているからです。令和4年度には、一般入試枠は41.7%に下がり、推薦入試枠(総合型選抜/学校推薦型選抜)は58.3%に上がっています。通信制高校には不登校になった子や勉強が遅れている子も在籍しているので全日制高校に比べると一般入試での進学率は低いですが、大学側が推薦入試に力を入れ始めたことで通信制高校から進学する生徒が増えているのです。
また、通信制高校は中学校からの学び直しができ、生徒の伸びしろをつくる仕組みが整っています。不登校などの嫌な経験を乗り越えて再び学校に登校できるようになり、そこから将来に目を向けられるようになった事実も総合型選抜ではアピールポイントになり、その結果、多くの大学合格者が生まれています。さらに、通信制高校には大学進学だけではなく専門学校への進学や就職、生徒の自立に向けたさまざまな取り組みが行われています。通信制高校に入学すれば人生が終わるどころか、むしろ将来に向けて必要なことが学べるかもしれません。

親の気持ちはできる子を求めがち

多くの親は、自分の子どもに対して「普通の子であってほしい」と願います。では、普通の子とはどのような子どもでしょうか。毎日学校に通い、みんなと一緒に授業を受け、できればテストで良い点数を取れる子でしょうか。それは、普通の子ではなく、世間一般的なできる子です。子どもが成長していろいろなことができるようになる姿を見る中で、いつしか「普通の子」から「できる子」を求めているようになってはいませんか?
人間関係がうまくいかなかったり、勉強についていけなくなって不登校になった場合、無理して全日制高校への復学を目指すと状況が悪化し、不登校が長期化してしまうことがあります。
不登校支援や大学受験対策、ダンスやプログラミングといった多彩なコースなど、通信制高校にもいろいろな特徴を持つ学校が増えており、自分の得意なこと、やりたいことのために通信制高校に入学し、高校生活を思いっきり楽しんだり将来の夢に向かって前向きに頑張っている生徒が増えています。いまでは全日制高校に通わないことがデメリットなのではなく、自分に合わない学校で高校生活を送ることがデメリットと言えるでしょう。

子供が通信制高校に行きたいと言ったら

子供が通信制高校に行きたいと言ったら

世の中では価値観の多様化が進み、自分らしく生きることが求められるようになりました。その波は学校という教育現場にも押し寄せて通信制高校の多様化が進み、自分に合わない学校を選ぶことがデメリットとなっています。逆に考えると、全日制高校と同様に通信制高校を進学先・転入先の選択肢に入れておけば、さまざまな学校の中から本当に自分に合っている学校を探せるというメリットを得られます。
コロナ禍を経験した普通の子どもの多くは、学校に登校しなくてもオンラインで効率的に勉強できる方法を知り、そこで多くのメリットを享受できることを知りました。実際、中学卒業後にストレートで通信制高校に進学する子も増えています。
親の立場では、全日制高校に進学できる偏差値があり不登校の経験もない子どもに対しては「通信制高校に入学するのは甘えではないか」と思うかもしれません。また、周囲からそのように思われることを懸念するかもしれません。しかし、自分の好きなことをするため、将来の夢や目標を叶えるために「通信制高校に行きたい」と子どもが言っているのなら、できる限り応援してあげてください。親が通信制高校という選択肢を前向きに捉えていれば、子どもはポジティブな気持ちで自分にとってベストな選択ができるはずです。

通信制高校への転入を後悔しないために必要なこと

全日制高校から通信制高校に転入する場合、最も気を付けなければならないのは単位の引き継ぎです。通信制高校は前期(4月~9月)と後期(10月~3月)に単位の申請・修得ができますが、全日制高校は年度末の1度だけです。そのため、1年次の12月に転入したいと思っても、すぐに転入すると全日制高校で過ごした1年次の単位がもらえず、通信制高校でもう一度1年生からはじめなければなりません。そうなると、全日制高校の同級生とは卒業するタイミングがずれてしまいます。一方、なんとか全日制高校に3月まで在籍して1年次の単位をもらい、2年次の4月から通信制高校に転入する手続きをすれば同級生と同じタイミングで卒業できます。卒業時期をずらさないためにも、高校1年次~2年次に転入する際は全日制高校と通信制高校の「単位の修得時期の違い」を理解しておきましょう。

また、高校3年次に転入する場合はなるべく早く動くことが大切です。学校に慣れるには誰でも多少の時間はかかりますし、大学に進学したい場合は受験勉強にも影響が出ます。早く動くことで転入の影響を最小限に抑えましょう。
「他の学校に転入したい」と思い始めると、普通の子は1日でも早く転入したいと考えるものです。ただ、「家に近い」「学費が安い」といった理由だけで選ぶとのちのち後悔するかもしれません。通信制高校も高等学校である以上、一番の目的は高卒資格を取得して将来につなげることです。いろいろな学校を見学し、「スクーリングに通えるか」「雰囲気が自分に合っているか」「やりたいことができるか」「必要なサポートを受けられるか」など、さまざまな面を検討した上で自分に合っている学校を選びましょう。

通信制高校の現実。全日制高校とは違う良さ

通信制高校の現実。全日制高校とは違う良さ

通信制高校にも全日制高校と同じように文化祭や体育祭、修学旅行などの学校行事があります。さまざまな特別活動の中でも各学校が特に力を入れているのが文化祭です。絵やイラストを描くのが得意な子は文化祭で展示したり、ゲームが好きな子は自作ゲームを体験ブースで披露したり、料理が上手ければ試食会や販売をします。全日制高校の文化祭はお祭り感の強いものですが、通信制高校は「生徒が成果を発表する場」として捉え、数人で一緒に取り組むことで「人間関係を構築する場」としても機能しています。全日制高校と違い、通信制高校の文化祭は生徒の成長を促す機会になっているのです。

不登校になって「学校は嫌い」と思っている生徒も、「友達はほしい」と思っているものです。そして、文化祭や体育祭などの学校行事を通して一気に仲良くなるケースが多々あります。「どんなことをしようか」と一緒に考えるだけでもコミュニケーションは活発になり、文化祭の準備をしていているうちにお互いのことを知り、文化祭が終わった後も一緒に遊び、気付けば友達になっています。全日制高校では友達づくりにおいて先生が介入することはほとんどありませんが、通信制高校では文化祭のグループ分けなどで先生が仲良くなりそうな子たちでグループをつくるなど積極的にアシストしているのが特徴です。
また、通信制高校は課外活動をはじめ嫌なことや興味のないことへの参加を強制されません。「友達をつくりたくない」と考えているなら、それも許容されます。しかし、高校を卒業して社会に出ればどこかのタイミングで人とコミュニケーションを図らなければなりません。無理に友達をつくる必要はありませんが、将来のために「人間関係を築く練習をしておこう」というスタンスで臨んではどうでしょうか。苦手なことでも少しずつ慣れ、積み上げていけるのが通信制高校の良いところです。

通信制高校は甘え?ずるい?

「通信制高校に行こうと思う」と親や友達に話すと、「それって甘えじゃない?」「毎朝登校しなくて良いなんてずるい」と言われ、悩んでしまうケースがあります。しかし、通信制高校への進学・転入を検討する生徒の多くは、学力不振、不登校、人間関係の問題などで「いまの学校に居場所がない」と感じており、その結果、進学先・転入先の候補に通信制高校を挙げているのです。
これは極めて現状に即した考えであり、抱えている問題を解決するための行動です。決して甘えではありませんし、悩みや不安を解決しようとせず、漫然と同じ場所に居続けることの方がよっぽど不健全です。会社に勤めている大人だって「やりたいことができない」「人間関係が悪い」といった理由で転職するのに、10代の高校生が自分に合っている環境を求めて転校することが悪いわけがありません。
それでも、親や友達は通信制高校を「下」に見て、「そんなところに行くな」と言うかもしれません。下に見るのは通信制高校に対してネガティブなイメージや偏見を持っているからです。ただ、それは数十年前、それこそ親の世代が高校生だった頃の話です。その頃から通信制高校は何度もアップグレードを果たし、いまでは普通の子が笑顔で高校生活を送れる場所になっています。ネガティブなイメージや偏見から生まれる周囲の声に惑わされず、自分の意思を貫いてください。

通信制高校にデメリットはないのか

通信制高校の良いところは、時間や場所の制約がないことです。自分のペースで登校でき、映像授業やオンライン授業ならどこでも勉強できます。全日制高校と比べると自由度が高く、自分の裁量でやりたいこと、やるべきことに取り組めるのが最大のメリットです。空いた時間を使って不登校の改善、病気の治療、スポーツや留学などにチャレンジすることもできます。
その反面、自由だからこそ生活面では自己管理が求められます。自由だから、いつでも勉強できるからと毎日ダラダラ過ごしているとレポートを提出できず、単位が取れない事態に陥るかもしれません。それは大きなデメリットです。全日制高校でも通信制高校でも、最も重要なのは高卒資格を取得することです。普段から自分を律し、将来に向けた土台を築きましょう。
他にも、通信制高校のメリットはたくさんあります。勉強面では小学校や中学校からの学び直しができ、学校生活ではスクールカウンセラーが居場所づくりに協力してくれますにおいても総合型選抜の増加によって通信制高校から大学に進学する生徒が増えています。通信制高校ならではのさまざまなメリットを活かして、充実した高校生活を送ってください。

通信制高校にデメリットはないのか
岩田 彰人
教育メディア

株式会社プレマシード

教育メディアクリエイター

岩田 彰人

一覧へ戻る