通信制高校のデメリットとは

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通信制高校に普通の子が入学することにデメリットがあるのか

多くの保護者が、「普通の子なら中学卒業後は全日制高校に通うはず」と思っているのではないでしょうか。全日制高校に毎日元気良く登校し、授業を受け、放課後は部活動に励む。自分の高校時代を振り返り、それが普通の子のあるべき姿と考えるかもしれませんが、近年は「自由度の高い学校で自分の好きなことをしたい」「和やかな雰囲気に惹かれた」といった理由で通信制高校に進学する生徒が増えています。
保護者にとっては、「通信制高校はドロップアウトした子が通う学校ではないのか」と思うかもしれませんが、それはもはや過去の話です。通信制高校への入学者が増えたことで各学校は生徒のニーズに応えるため多様なコースを設け、生徒は自分のペースで好きなことを学べるようになりました。また、高校卒業後の大学進学や就職を見据えたサポートも行っています。いまでは通信制高校に入学するデメリットはなく、全日制高校を含め自分に合わない学校に通うことがデメリットと言えるでしょう。

通信制高校に入学することは人生終わり

通信制高校のデメリット

通信制高校に入学する理由は、「中学で不登校になった」「勉強についていけない」「ダンスやプログラミングなどやりたいことがある」といったものが多いです。子どもが不登校になると、「この子の将来はどうなるのだろうか」と保護者は心配になるでしょう。周りの子と同じように全日制高校に通わないことに対して、「もう普通の子のように高校生活を楽しめないのだろうか」と不安になるかもしれません。
しかし、通信制高校には多くのメリットがあります。不登校支援に長けた教員やスクールカウンセラーが在籍しているので生徒一人ひとりに適切なサポートを行ってくれます。メンタルや体調の様子を見ながら登校できるため、不登校になった生徒でも改めて学校に通えるようになるはずです。勉強面でも小学校・中学校から学び直しができます。学校生活においても友達づくりをアシストしてくれ、文化祭や体育祭のような学校行事も楽しめます。通信制高校に入学したからといって大きなデメリットはありません。強いて言うなら、全員で授業を受けるわけではないので学力向上という目的のためにクラスメイトと切磋琢磨するのは難しい環境であること、また、高体連が主催する部活動の大会に参加できないくらいです(高野連主催の甲子園大会とその予選には参加できます)。
「本当だろうか…」と思う方は、ぜひ個別相談会やオープンキャンパスに参加してみてください。通信制高校のキャンパスを訪れると、きっと全日制高校と変わらず普通に高校生活を楽しんでいる生徒の姿を目にするはず。さまざまなメリットがある通信制高校に入学して「人生終わり」と感じることは何もありません

中高生がかかえる問題に対する通信制高校のメリット、デメリット
通信制高校 全日制高校
心身の問題へのケア 個別サポート
ノウハウが豊富
集団生活のため
一人ひとりへのケアは薄い
勉強の遅れに対するケア 小学校・中学校から学び直しができる クラス授業が基本。追いつくには塾などを活用
高校生活の過ごし方 先生が友達づくりをアシスト
学校行事は任意参加
部活動や学校行事が豊富
進学へのアプローチ 大学や専門学校への進学、就職などは個別にサポート 多くの生徒が大学や専門学校へ進学するため
切磋琢磨しながら目指すことができる

保護者の方は自身でも体験しているかもしれませんが、多感な時期を過ごす中学生や高校生は環境の変化やちょっとしたことでつまずいてしまうことがあります。そんな思春期を、自分の力や周囲のアドバイスで乗り越えられる生徒なら全日制高校で過ごすことは当たり前かもしれません。
しかし、自分の個性がなかなか周囲に受け入れられない生徒や、どうしてもクラスに馴染めない生徒にとっては、集団生活が基本となる全日制高校は苦痛になるでしょう。
通信制高校には中学生や高校生の抱える問題を受け止め、一人ひとりの個性を伸ばす仕組みや仕掛けがたくさんあります。どのような個性も尊重され、誰もがのびのび学校生活を送ることができる。それこそ通信制高校の大きなメリットです。

通信制高校の現実は。なぜダメなのか

「通信制高校に入ると大学進学や就職に不利になる」とまことしやかに言われてきました。かつては全日制高校に入学することが一般的な道であり、全日制高校に馴染めず通信制高校に転入するのは集団生活に耐えられない生徒だと見なされたからでしょう。オンライン授業やリモートワークという言葉もなかった時代には、毎日の通学や出勤ができないことはマイナスに捉えられるはずだと思われても仕方なかったのかもしれません。また、通信制高校には不登校経験者や勉強が遅れている子などいろいろな生徒が在籍しており、全日制高校に比べると一般入試での大学進学率は低く、余計に大学進学に不利だというイメージが強まったのでしょう。

しかし、コロナ禍を経て学び方も働き方も大きく変わりました。大学入試自体も様変わりし、いまでは推薦入試(総合型選抜/学校推薦型選抜)での入学割合が一般入試より高くなっています。推薦入試の割合が高まっていることで、①勉強の遅れをケアするために学び直しで基礎を固められる、②自由な時間で資格や検定を取得して自分の個性を伸ばせる、という通信制高校にメリットの大きい状況が生まれています

中には、学歴に通信制高校の記載があることで就職時にデメリットとなるのではないか、と心配する方がいるかもしれませんが、学歴は基本的に最終学歴で判断されるため大学に進学すれば上書きされます。何より、苦手なことや辛いことを抱えて通信制高校に入学しながら、それを乗り越えて大学受験に挑む姿勢は人間的な成長を意味し、面接でも大きなアピールポイントとなるでしょう。複数回の留学やプログラミングなど、全日制高校ではできない経験も通信制高校ならではのメリットとなるはずです。

通信制高校への転入を後悔してしまう人が陥りがちなこと

全日制高校で不登校になったり、勉強についていくのが難しくなった生徒のほとんどは通信制高校に転入して良かったと話します。しかし、中には全日制高校から転入したことを後悔する生徒もいて、後悔している生徒は大体以下の2つのパターンです。

① 単位の引き継ぎが上手くできず、同級生と同じ時期に卒業できなかった

全日制高校と通信制高校では単位を取得できる時期と回数が異なります。全日制高校は年度末に1度、通信制高校は前期と後期の2度です。つまり、高校1年の12月に転入すると全日制高校で1年次の単位は取得できず、通信制高校でも後期分の単位しか取得できないため卒業が半年ずれてしまうのです。

② 自分に合わない学校に転入してしまった

全日制高校で勉強についていくのが難しくなったにも関わらず、学び直しができる学校ではなく大学受験に力を入れている通信制高校だった。学校生活を楽しみたいのに、在宅学習が中心で学校行事が少ない学校だった。マイペースでコツコツ勉強したいのに、全日制と同じようにカリキュラムが決まっている学校だった。

このような自分に合わない学校に転入した場合は後悔するかもしれません
転入を後悔しないためには、学校の仕組みだけでなく、先生や生徒の雰囲気、通学の場合は通い易さも考慮して転入先を決めましょう。そのためにも複数校を比較して個別相談会に参加することが大切です。個別相談会で学校の特色や転入の手続きについて話を聞いておけば二度目の高校生活を楽しめるはずです。

通信制高校に通う生徒の親の気持ち

「通信制高校に入学して心身の不調から脱し、再び登校できるようになった」「自分の好きなことに時間を割けるから高校生活が楽しい」という生徒はたくさんいます。通信制高校にはさまざまなメリットがありますが、一方で親の気持ちとしては複雑な部分もあるかもしれません。全日制高校に比べると世間体が悪いと思うでしょうし、本当に全日制高校と同じような高校生活を送れるのだろうか、という心配もあるでしょう。
ただ、そのような通信制高校のデメリットは過去のイメージからくる偏見であることがほとんどです。そして、偏見を払拭するためにも、いまの通信制高校を正しく理解してほしいと思います。通信制高校の取り組みやサポート体制を知れば、「こんなに手厚いのか」と驚くはずです。そして、通信制高校を知れば「子どもにとってベストな学校はどこなのか」と考えるようになるでしょう。通信制高校に対して不安が募るのも、いまの通信制高校を知らないからです。

通信制高校 やめとけ 知恵袋の書き込みは正しいのか

通信制高校への進学や転入を検討し、「実際はどんな学校なのだろう」と知恵袋や掲示板で調べることがあると思います。すると、出てくる回答は「通信制高校はやめとけ」「入学したら後悔する」といったネガティブなものが多いのではないでしょうか。これは、回答者がいまの通信制高校の実態を知らず、20~30年前の情報をもとに答えていたり、憶測やイメージで書き込んでいるからです。こうした状況は知恵袋や掲示板だけではなく、通信制高校の情報を扱うまとめサイトでも見受けられます。検索する人がいれば適度にPV数を稼げるため、情報のコピー&ペーストが繰り返されてきた結果です。一昔前の情報が拡散され、その情報を鵜呑みにした誰かが発言することで、誤った情報が正しいものと認識されているのです。 高校を選ぶ際は、全日制高校だから良い、通信制高校だから悪いという安易な判断をせず、「自分に合っている学校なのか」「必要なサポートを受けられるのか」という基準で選んでください。自分で選んだ学校なら入学したことに対する責任感も生まれ、より主体的な学校生活を送れます。

定時制高校のメリット・デメリット

通信制高校のデメリット

通信制高校も定時制高校も、もともとは働きながら高卒資格を取得するための学校として生まれました。しかし、いまでは通信制高校の学校数は毎年増え、定時制高校の学校数は毎年減っています。高卒資格を取ることを目的とする場合はどちらの学校も選択肢に入るかもしれないので、ここで定時制高校のメリットとデメリットを整理してみましょう。

定時制高校のメリット

  • ① 都合の良い時間で学べる

    「定時制=夜間」というイメージが強いでしょうが、朝と昼に授業を行う「昼間二部定時制」や朝・昼・夜に授業を行う「三部制」など、自分の都合に合わせて授業の時間帯を選べる学校もあります。

  • ② 学費が安い

    基本的に社会人が通う学校なので、働きながら無理なく学べるよう学費が安く設定されています。

  • ③ いろいろな人がいる

    社会人や高校退学者などいろいろな人がいて、それぞれの事情を理解してくれます。年齢層も10代より20代以上が多いため、社会人同士で仲良くなりやすい環境です。

定時制高校のデメリット

  • ① 4年制

    4年制のため、全日制高校や通信制高校に比べると1年余計に高校に通わなければならない。

  • ② 登校日数が多い

    頻繁に登校しなければならないため、不登校経験がある生徒にはハードルが高い

  • ③ 通信制高校ほどサポートは手厚くない

    通信制高校は10代がメイン層のためさまざまなサポートを行っています。定時制高校のサポート体制は通信制高校ほどではありません。

定時制高校の一番のネックは、やはり4年間通わなければならないということです。基本的に登校しなければならない点も負担に感じる人が多いため生徒数が減り、学校数も減っているのでしょう。

通信制高校 全日制高校 定時制高校 のメリット、デメリット一覧

通信制高校、全日制高校、定時制高校のメリットとデメリットを比較する機会は少ないかもしれません。そこで、在籍年数や学習方法から進学まで一覧にまとめてみます。

  • 通信制高校
  • 全日制高校
  • 定時制高校
在籍年数
  • 3年
  • 3年
  • 4年
学習方法
  • 一人ひとりに合わせた学び、集団での学びの組み合わせ
  • クラス授業が基本
  • クラス授業が基本
心身の問題へのケア
  • 個別サポート
    ノウハウが豊富
  • 集団生活のため
    一人ひとりへのケアは薄い
  • 集団生活のため
    一人ひとりへのケアは薄い
勉強の遅れに対するケア
  • 小学校・中学校から学び直しができる
  • クラス授業が基本
    追いつくには塾などを活用
  • クラス授業が基本
    高卒資格取得に向けた授業を受ける
高校生活の過ごし方
  • 学校行事もあり、友達もできやすい
  • 部活動や学校行事が豊富
  • 社会人の友人をつくりやすい
自分の時間(やりたいことへの取り組み)、病気の治療、働くことなどとの両立
  • 高卒資格のための授業は最低限の時間で可能なため、両立しやすい
  • 決められたカリキュラムを規定通りにこなす必要があるため両立は難しい場合がある
  • 社会人の方が受けやすいカリキュラム、スケジュールのため、両立は可能
一緒に過ごす同級生
  • 不登校経験をもつ、同じ境遇の同級生が多い
  • 同学年の友人ができる
  • 社会人を含めて、さまざまな人がいる
進学や就職へのアプローチやサポート
  • 大学や専門学校への進学、就職を生徒一人ひとりにあわせて行うことができる
  • 多くの生徒が大学や専門学校へ進学するため切磋琢磨しながら目指すことができる
  • すでに働いている人が多く、進学や就職のサポートは多くはない
大学の推薦入試への対応
  • 評点がとりやすい仕組があり総合型選抜を積極的に活用できる
  • 多くの指定校推薦枠がある場合がある
  • すでに働いている人がおおいため、進学を前提としていない

学習方法を例にとると、通信制高校の「学び直しができる」と全日制高校の「クラス授業」は人によってメリットにもデメリットにも受け取ることができます。勉強が苦手なら学び直しができる通信制高校にメリットを感じるでしょうし、普段から学習塾に通っていてどんどん授業を進めてほしいと考えている生徒には学び直しができる点など何のメリットにもなりません。
また、通信制高校は自由に使える時間が多いため、自分を律して勉強に取り組まないと無駄な時間を過ごしてしまい、3年間で卒業できないという事態に陥る可能性もゼロではありません。まずは自分に必要な学びやサポートを整理し、その上で通信制高校、全日制高校、定時制高校のメリットとデメリットを理解しましょう。そうすれば自分に合っている学校を選べるはずです。

岩田 彰人
教育メディア

株式会社プレマシード

教育メディアクリエイター

岩田 彰人

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