通信制高校の現実とは

PICKUP

通信制高校に入学すると人生終わりなのか

毎日学校に登校してみんなで一緒に授業を受ける全日制高校。友達と他愛もない話で盛り上がり、部活動では喜びや挫折を味わい、体育祭や文化祭ではクラスが一致団結して楽しんだ、という思い出がある人もいるかもしれません。そんな全日制高校の良い部分を経験してきた保護者からすると、通信制高校は「通常のレールから外れた高校」と感じるでしょう。一方、中高生にとっては「同級生が通う学校とは違う学校」という認識ではないでしょうか。
ネット上では保護者が抱くイメージの方が強く、中には「通信制高校に入学したら人生終わり」というような辛辣な言葉も見受けられます。しかし、通信制高校の現実は全く違い、全日制高校と同じように良い所がたくさんあります。

通信制高校に入学すると人生終わりなのか
  1. 不登校経験があっても無理のない学習方法を選択でき、高卒資格を得られる
  2. 自分のペースで高校生活を楽しみ、友達もできる
  3. 自由な時間が多いので、ダンスやeスポーツなど好きなことに集中できる
  4. 大学進学、病気の治療など将来のために時間を使える

通信制高校の仕組みと先生たちの熱量により生徒たちは手厚いサポートを受けられ、一人ひとりが抱えている問題を解決することができます。これが全日制高校にはない、通信制高校ならではのメリットです。人生が終わるどころか逆に好転し、不登校経験がある生徒も高卒資格を取得して大学・専門学校への進学や就職などの進路を切り拓いています。

通信制高校と言われたときの親の気持ち

通信制高校と言われたときの親の気持ち

子どもから「通信制高校に行きたい」と言われたとき、多くの保護者は「もう普通の子には戻れない」「みんなのように高校生活を楽しめないのだろう」という諦めにも似た感情を抱くそうです。多くの生徒が笑顔で過ごしている通信制高校の仕組みや雰囲気を知らなければそう思ってしまうのも仕方ないでしょう。でも、通信制高校は30年前(保護者世代が高校生だった頃)とは大きく変わり、生徒のやりたいことが叶う場所になりました。いまでは不登校経験をもたない普通の子が中学卒業後の進学先候補として通信制高校を検討しています。
保護者の方には、今一度「普通の子」とはどのような生徒を指すのか考えてほしいと思います。全日制高校に毎日元気に登校し、部活動に取り組み、高校生活を満喫する生徒でしょうか。それは普通の子ではなく、理想の高校生です。知らず知らずのうちに、親にとっての理想像を子どもに押し付けていないでしょうか。ずっと育ててきたのだから、子どものことは自分が一番理解している、という自負はあって当然です。ただ、中高生になった子どもの「やりたいこと」や「やりたくないこと」を即答できないのであれば、改めてコミュニケーションを深める必要があるかもしれません。
通信制高校の現実を知り、子どもの考えを理解すれば、「通信制高校に行きたい」と言った子どもの気持ちに寄り添えるはずです。

通信制高校 やめとけ 知恵袋でなぜ言われる

通信制高校 やめとけ 知恵袋でなぜ言われる

通信制高校への入学を検討すると、周囲の人たちから「やめとけ」と言われるそうです。特に知恵袋や掲示板といったネット上では、「やめとけ」という声に加えて「通信制高校なんて甘えだ、ずるい」という意見も上がってきます。こうしたネガティブな反応の原因は、過去の通信制高校のイメージが悪いからです。もともと通信制高校は社会人が高卒資格を取るための学校として誕生し、定時制高校と同じような役割をもっていました。しかし、次第に全日制高校の勉強に付いていけなくなった生徒や問題を起こして退学した生徒たちが集まる場所になり、「全日制高校からドロップアウトした生徒が行く学校」というイメージが固まっていきました。通信制高校へのネガティブな反応は大体この頃のイメージによるもので、今の通信制高校の現実を知らないために生まれています。
その後、固定のカリキュラムに捉われず自分のペースで学べる仕組みが注目され、通信制高校は不登校になった生徒たちの受け皿となります。さらに、自由度の高い環境を活かし、ダンスやeスポーツ、プログラミングなど生徒一人ひとりが自分のやりたいことを叶えられる場所に発展しました。実際、通信制高校の在校生や卒業生の多くは入学や転入を後悔することなく、自らの高校生活をポジティブに語っています。

通信制高校を取り巻くリアルな現実

通信制高校からの大学進学

通信制高校への入学は、生徒本人よりも保護者をはじめとする周囲の人が避けようとする傾向にあります。これは、通信制高校に入ることで何かしらのデメリットが生じると考えているからです。例えば、内申書や履歴書に通信制高校の名称が入っていると、大学受験や就職の際に「この子は通信制高校に行かなければならない理由があったのだ」と思われ、不利を受けるのではないかと心配するようです。しかし、大学受験に関しては通信制高校だからといって現実的に不利になることはありません。その理由は以下の3点にあります。

通信制高校からの大学進学
  1. 通信制高校は中学の勉強の学び直しができる
  2. 自由度が高いので勉強の時間を確保しやすい
  3. 総合型選抜(旧AO入試)では過去の挫折がプラスになる

特に受験方法については、大学側の「生徒を見るポイント」が変わり、一般入試よりも推薦入試で入学する生徒の方が多くなっています(※一般入試:41.7%、推薦入試:58.3%)。中でも、総合型選抜は「不登校のような挫折を乗り越えて学びたいことが見つかった」という志望動機をつくることができ、面接では通信制高校に入学したきっかけや入学前後の変化も武器になります。通信制高校に通ったことを強みに変えれば、むしろ大学に合格しやすくなる、そんな時代です。

※令和4年度国公私立大学入学者選抜実施状況
https://www.mext.go.jp/content/20230123-mxt_daigakuc02-000027141_03.pdf

通信制高校に通う生徒は普通の子

近年、通信制高校の雰囲気は大きく変わっています。以前の通信制高校には全日制高校をドロップアウトした生徒がほとんどでしたが、通信制高校が不登校の受け皿として機能し、さらに自由度の高い環境に惹かれて中学卒業後にストレートで進学してくる普通の子が増えてきました。すでに中高生の間には「ヤバい生徒が多い」という印象はないようです。
普通の子が増えた要因は、コロナ禍によって小・中学校でもオンラインで学べる体制が急速に整備され、「毎日学校に登校しなくても勉強できるんだ」と多くの生徒が気付いたからです。そして、通信制高校にも「生徒のやりたいことを叶えよう」という機運が高まり、ダンスやeスポーツ、プログラミングなどの専門コースを設けるようになりました。

通信制高校に通う生徒は普通の子
通信制高校に普通の子が増えた要因
  • ①不登校経験者の受け皿になっている
  • ②オンラインで学べ、利便性が高い
  • ③好きなことを学べる環境がある

コロナ禍は高校に対する価値観を変えました。全日制高校が合わなくても我慢して通っていた生徒が、通信制高校を主体的に選ぶようになった。これが通信制高校の現実です。

通信制高校はずるい、甘えを言われるのは、なぜ

通信制高校に入学すると「ずるい」「甘えだ」と言われるそうです。おそらく、毎日登校しなくても卒業できる通信制高校のシステム「ゆるい」と思われ、このシステムによって毎朝決まった時間に起きなくても良いことが「ずるい」「甘え」という意見につながるのでしょう。確かに、通信制高校のシステムは全日制高校に比べてゆるいです。学校やコースによっては毎日登校する必要がなく、それでいて全日制高校と同じように高卒資格を取れます。勉強も学習動画を見てレポートを解けばOK。スクーリングに参加してテストを受ければ単位を取得できます。
しかし、それはあくまでシステム面の話です。実際に通信制高校に通っている生徒たちは不登校からの学び直しに取り組んでいたり、大学進学を目指して勉強したり、高校生活を全力で楽しもうと自分の好きなことに熱中したり、目的意識をもって動いている生徒が大勢います。通信制高校の現実、そこで過ごす日常は、全日制高校と何ら変わりはありません。

通信制高校への転入を後悔しないために

全日制高校から通信制高校へ転入したものの、転入を後悔するケースも現実に起きています。主な原因は以下の2点です。

  1. 同級生と卒業時期がずれてしまう
  2. 転入先を生徒本人が決めていない

学校を変えるには「転入」と「編入」の2種類があります。例えば、全日制高校に在籍している状態で通信制高校に転校する場合は「転入」、全日制高校を辞めてから通信制高校に入り直す場合は「編入」です。転入は空白期間がなく、編入は空白期間が生じます。高校は「3年継続して在籍する」ことが卒業要件になっているため、全日制高校を退学するとこの卒業要件を満たせず同級生と卒業時期がずれてしまうというわけです。
また、全日制高校は年度ごとに単位を修得するため、年次の途中で通信制高校に転入すると全日制高校分の単位がもらえません。ただ、通信制高校は前期(4~9月)と後期(10~3月)の年2回単位を申請でき、前期のうちに転入すれば1年分の単位を修得できます。そうなれば同級生と同じタイミングで卒業できるので、転入の時期や流れについては転入先の学校の先生としっかり話し合っておきましょう。
最後に、転入先の学校を生徒本人が決めたかどうかも大切なポイントです。保護者や周囲の勧めでイヤイヤ転校するようでは転入先での学校生活を楽しめず後悔する羽目になります。自分の好きなことができるか、学校の雰囲気は合っているかなどを事前に確認し、希望をもって転入してください。

公立通信制高校の現状とは

公立通信制高校の現状とは

公立通信制高校の現実として、私立通信制高校と比較すると卒業率や進路決定率が低い傾向にあります。これは通信制高校の歴史に起因している問題です。もともと通信制高校は社会人が高卒資格を取るための学校として誕生しました。そのため、不登校のケアや大学受験のサポートは想定されていませんでした。一方、私立は生活面から学習面までサポートを充実させて卒業率を高めています。
ただ、公立は私立に比べると圧倒的に学費が安いです。就学支援金が適用されれば負担額は年間で数万円程度です。この学費の安さに惹かれ、知恵袋や掲示板では「通信制高校_公立」というキーワードで盛んに質問がされています。通信制高校が誕生した経緯からも、公立に向いているのは生活と学習の両面で自立している生徒です。毎朝起きて学校に登校し、レポートも基本的に一人で進められる生徒なら全く問題ありません。しかし、不登校や起立性障害のように学校に行くことが難しいなら私立の通信制高校に入学し、適切なサポート受けながら卒業を目指した方が良いでしょう。

通信制高校に偏差値があるのか?

通信制高校には偏差値がありません。入学試験も勉強の難易度のようなものはなく、面接が重視されています。面接も学校との相性確認がメインです。髪型やネイル、ピアスなど自分らしいファッションを楽しみたいと考えているのに校則の厳しい学校に入ってしまうと息苦しく感じるはず。そうしたミスマッチをなくすための面接なので、上手く話せなくても先生方が寄り添って対話を促してくれます。
偏差値がないため、大学進学を希望する場合は勉強面で不利になるのではないかと思うかもしれません。しかし、通信制高校の生徒の多くが大学受験で合格を勝ち取っている現実があります。

  1. 勉強する時間を確保しやすく、一般入試での合格を目指せる
  2. 総合型選抜を利用して大学に進学する生徒も多い
  3. 受験勉強をサポートする通信制高校もある

特に、総合型選抜を突破するには自分と向き合い、やりたいことを深掘りして、この大学で学びたいという熱意を示さなければなりません。その点、通信制高校には自分と向き合うための時間がたっぷりありますし、総合型選抜という受験方法なら挫折した経験もプラスに活かすことができます。通信制高校の生徒にとっては最適の受験方法です。

通信制高校のデメリット

デメリットはないと言い切れるのが通信制高校の現実です。それでも敢えてデメリット挙げるなら、それはメリットの裏返しによるものです。
例えば、カリキュラムが決められている全日制高校に比べると通信制高校には自由に使える時間が多いです。ただし、自由な時間が多い分、時間の使い方に対して自己管理が求められます。毎日ダラダラと過ごすだけでは全日制高校で勉強や部活動を頑張っている生徒とはいろいろな面で差が開いていきます。そのツケが卒業時にやって来て大学進学や就職に苦労するかもしれません。

通信制高校のデメリット

つまり、自由な時間が多いというメリットはあるが、自己管理が求められるというデメリットもあると言えます。しかし、それはどのような事象にも言えること。アルバイトをすればお金をもらえるけど自分の時間が減るというのと同じであり、通信制高校のデメリットはそういうものです。

岩田 彰人
教育メディア

株式会社プレマシード

教育メディアクリエイター

岩田 彰人

一覧へ戻る