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通信制高校には「中学や高校で不登校になった生徒が行く学校」というイメージがあると思います。不登校経験がある生徒は確かに多いですが、その中でも近年は偏差値が高い私立中高一貫校や進学校から通信制高校に転入してくる生徒が増えており、スクールカウンセラーのいる相談室にも、そうした生徒からの相談が増えています。
中高一貫校や進学校から転入してきた生徒たちは「通信制高校に行くような自分はダメな存在」と考えて、「親にも見放された」と思い込んでいることが多いように感じます。卒業後はどうしたいかを聞いても、「将来なんてどうでも良い。その時にできる仕事をする」と半ば自暴自棄になって諦めている生徒も見られます。
このような状況に陥っているのは、親や周囲の期待を一身に受け、これまで勉強を頑張りすぎたことに原因があるように感じます。入学してホッとしたのも束の間、偏差値が高い学校には同じように勉強ができる生徒が入学してくるため周囲と比べると入学後も気を抜けず、休みたいけど休めない環境でついにパンクして不登校に。頑張って入学した学校から通信制高校へ転入したことが不本意で、転入後も悩み続けているようです。
相談室で話を聞くと、「父親に見放されている」と感じている生徒が少なからずいることも気になる点です。ただ、よく話を聞いてみると必ずしもそうではないことがわかります。例えばこんなやりとりが生徒との間にありました。
中高一貫校や進学校から通信制高校に転入すると、勉強方法や校舎の雰囲気、周囲との人間関係など、環境は激変します。その変化についていくために生徒の頭はいっぱいになっているので、カウンセラーも時間をかけて話を聞くよう心掛けています。
そして、「いま苦しいと思っていても、その苦しさがずっと続くわけじゃない」ということを必ず伝えています。生徒は高校の3年間で驚くほど成長します。そもそも中高一貫校は似た価値観の家庭の、同程度の学力を持つ子どもたちが集まったある種狭い世界です。そこを離れて、新しい学校に転入し、アルバイトやボランティアなどを始めて学校以外の人たちと出会うことで世界が広がり、通信制高校にもポジティブな気持ちで通えるようになるケースも多いです。
通信制高校やスクールカウンセラーに相談にくるのは圧倒的に母親が多いです。子どもの普段の様子を見て、兄弟姉妹や同級生と比べてしまい「このままで大丈夫かしら」と心配になるようです。子どもが不登校になって家に閉じこもっていると心配になる気持ちもわかります。でも、母親としては子どもを見守っているつもりでも、いつしか子どもは「監視されている」と感じてしまうことがあります。少しでも発奮させようと「前の学校の子たちは毎日勉強しているんだよ」と声をかけてもプレッシャーにしかなりません。
子どもが気になる気持ちは少し抑え、まずはお母さん自身が自分が楽しめる時間をつくってみてください。こう言うと「私が楽しんでいいんですか?」という反応をいただくことが多いんです。子どもが苦しんでいる時に楽しもうとすることに罪悪感が湧いてしまうのかもしれませんが、お母さんが楽しんでいる様子を見ると子どもは「何が楽しいんだろう」と気になります。そうして子どもの関心を惹きつけた方がコミュニケーションは上手くいくはずです。
1つだけ注意喚起しておきたいのは、うつ病や統合失調症のような精神疾患は心が弱いから発症するものではないということです。性格、環境、生活習慣、ストレス、遺伝的要因などが絡み合い患うものです。いまでも「うつ病になるのは心が弱いからだ」と子どもを叱る保護者がいるので、この点は保護者の認識をアップデートしていただきたいな、と思います。
最後に、いま悩みを抱えている生徒のみなさんには、私たちのようなスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、そして通信制高校の先生たちをもっと頼ってほしいです。他人に頼るのは自分が弱いからだと思うかもしれませんが、人に頼れるのは他人を信頼できる強い力があるから。決して弱いからではありません。
中高一貫校や進学校から通信制高校に転入したことに挫折感を覚えているのは「中高一貫校や進学校に通ってる自分」に価値を見出していたからではありませんか。前の学校に通っていたあなたも、新しい学校に通っているあなたも、あなた自身の価値は変わりません。自分自身に価値を見出しましょう。いつか本来の自分で勝負できるよう、私たちはしっかりサポートしていきます。