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マンガやアニメ、イラスト、ゲームなど、「自分の好きなことを学びたい」という高校生が増えています。ただ、中には「好きなことだけを学んで良いのだろうか」「卒業できるのだろうか」と後ろめたさや不安を感じる生徒や保護者もいるそうです。そこで、さまざまな芸術系のコースを設けている『北海道芸術高等学校 東京池袋サテライトキャンパス』の杉本良行先生に、最近の高校生が好きなことや高卒資格を取るためのサポートなどを伺いました。
高校生の頃から好きなことを学ぶメリットは2つあります。1つは、専門的な知識や技術を習得できること。もう1つは、グループワークなどで社会性も身に付くことです。専門的な知識・技術をもち、社会性を備えていれば将来の可能性は大きく広がります。「グループワークなら一般科目でもできるだろう」と思うかもしれませんが、学ぶ対象に興味が湧かなければ他の生徒とコミュニケーションを図ろうとはせず、結果的に社会性は身に付きません。好きなものをみんなで学ぶことに意味があるのです。
いまの高校生に好きなものを聞くと、マンガやアニメ、イラスト、ゲームなどがよく挙がります。声優や歌い手が好き、という生徒も多いです。中でも、不登校の経験がある生徒は家でアニメを見たり、ゲームをやったり、イラストを描いている場合が多いので、通信制高校に入学する時は自分の好きなコースを選択する傾向にあります。通信制高校に入学した生徒の全国統計を見ても好きなものに性別差はそれほどありません。例外を挙げるならeスポーツで、eスポーツを好きなのはほとんど男子生徒です。
マンガやアニメ、イラストをはじめ、最近は生徒が好きなものを学べるコースや設備を用意して、学校を自分の居場所だと感じてもらい、登校したくなる環境をつくっている通信制高校が増えてきました。プロの講師が教えてくれる学校も多いので、通信制高校だからこそ自分が好きなことを学び、極めてほしいと思います。
入学前には「登校型のコースだと毎日登校できるかわからない」「学力的に単位が取れないかもしれない」といった不安から、「卒業できないのではないか」と考えている生徒・保護者が一定数います。しかし、登校型のコースでも体調不良などで登校できない場合はオンデマンドの授業を受けてもらってレポートを提出してもらう学校もありますし、不登校などで中学の学習内容がすっぽり抜け落ちている場合は中学からの学び直しや基礎レベルから勉強をスタートできる学校もあります。この辺りは学校によって対応が異なるので、不安な点があれば個別相談会などに参加して直接先生に聞いた方が良いでしょう。
学習面以外にも、私が所属している『北海道芸術高等学校』ではマンガ・イラストや声優といった芸術系の各コースで分野ごとのグループワークを数多く行い、その中でコミュニケーション力なども養っています。マンガ・イラストコースの生徒がつくったアニメーションに声優コースの生徒が声を吹き込んだり、声優コースの生徒が舞台に出る時はファッション・ビューティーコースの生徒がメイクを担当したり、コースを横断して物事に取り組むことで協調性やチームワークも育んでいます。
コミュニケーション力や社会性は自立する上で必須のスキルと言えるものです。漫画家のような職業は「面白いマンガが描ければ良い」と思うかもしれませんが、出版社に持ち込んだ際はストーリー展開やコマ割りの意図を編集者に説明する機会があるでしょう。どのような職業であっても他者と関わり、対話を図らなければなりません。しかし、そのことを教員が授業で教えると勉強の色合いが濃くなり、耳を貸さない生徒が出てきます。「社会に出たら必要だから」と頭ごなしに言っても効果はありません。強制的な指導ではなく、グループワークや高校生活を通して自然と培い、好きなことを学びながら社会性を身に付けていくのがベストだと感じています。
高校生の頃から好きなことを学んで専門的な技術を磨き、社会性も身に付けることができれば将来の可能性は大きく広がります。不登校気味だった生徒が卒業後は進学先や就職先で活躍しているケースも多いので、「好きなものを学ぶ」ことに恐れずチャレンジしてください。
学校で好きなことを学べれば、「授業を受けたい」という想いから登校に対して前向きな気持ちをもつようになります。「同じものが好き」という共通点があれば友達にもなりやすく、学校に慣れたら「違うものが好き」な生徒ともコミュニケーションを図れるようになります。そうして社会性を育めば、高校卒業後も自立した生活を送れるでしょう。学習面に不安があるなら、フォロー体制が整っている通信制高校を選ぶ。この点さえクリアしていれば、好きなものを学びながら高卒資格を得られるはずです。
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