メインメニュー
教育と医療、それぞれの現場で発達障害や知的障害の定義が曖昧になっています。発現する症状が単独ではないため見解の相違が生じる部分はあるにしても、子どもの特性と支援にズレがあれば子どもたちの高校選びを一層難しくしてしまいます。保護者の方々も、全日制高校、特別支援学校、通信制高校のどこに入学させることがベストなのか悩まれているのではないでしょうか。そこで、興学社高等学院の佐藤先生に子どもたちの特性に合わせた高校の選び方、通信制高校やサポート校が取り組む社会的自立を目指す支援についてお話を伺いました。
発達障害とは自閉症やアスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)などを指し、知的障害とは認知や言語にかかわる知的機能の発達に遅れが認められ、適応能力も不十分な場合を指すと文部科学省は定めています。(※)しかし、医療や教育の現場ではそれぞれの定義が曖昧になっていて、できないことを無理にやらせて子どもの自己肯定感をますます下げてしまう、ということもあるようです。
こうした事態を防ぐには、何よりも子どもがどういう特性を持っているのか正確に把握しなければなりません。いまの特別支援学校は精神面や知的面などの特性に応じてクラス分けが行われていますが、そもそも単独の症状だけが発現するわけではないので特性と支援にズレが生じることもあります。カテゴライズできず、公的支援からこぼれてしまう子どもがいて、その子たちが通える学校として通信制高校が機能する場合があり、受け皿として期待されています。
※参考文献
「発達障害について」 文部科学省 2023年1月26日参照
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm
「知的障害とは」 文部科学省 2023年1月26日参照
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/mext_00803.html
義務教育である小学校や中学校では公的なサポートがある程度整っています。ところが、高校は義務教育ではないので公的機関からの支援が途切れます。発達障害や知的障害に対する認知度が高まり、全日制高校や大学でも特性のある子どもの受け入れが行われていますが、問題なく学校生活を送ることは難しく、多くの子どもたちが通信制高校に転校しているのが実情です。一方、軽度の発達障害の子が特別支援学校に入ると「ここは自分の居場所じゃない」と感じ、自尊心が傷つく可能性もあります。
一言でグレーゾーンと言っても、その色は全員均一ではなく、グラデーションがかかっています。子どもの特性を知るWISC-Ⅳなどの検査でIQを計測した際、IQ80代後半ならホワイトに近いグレーゾーンと言えます。通信制高校なら快適に過ごせるでしょうし、環境や友人次第では全日制高校にもチャレンジできるでしょう。IQ70代はブラックに近いグレーゾーンとなり、適切なサポートを受けられる通信制高校を探すことが現実的な選択です。IQ70未満の場合は多くの自治体で療育手帳の交付目安になるため、特別支援学校の高等部に進むことが一般的になっています。
学校を探す時の一番良い方法は、やはり生徒本人と保護者が直接その学校を見ることです。特に最近は通信制高校の多様化が進み、大学進学に強い、学校生活が充実している、といった特色をもつ学校が増えています。不登校のサポートに長けている学校が多いわけではありませんし、不登校のサポートができるからといって障害にも適切に対応できるかは学校次第です。知能検査の結果や医師の診断書、テストの答案などを持って学校見学に行き、それらを確認した時の学校側の反応を見れば子どもに合った学校なのか判断できると思います。不登校のサポートがある通信制高校ならどこでも大丈夫だろうとは考えず、その学校にはどのような生徒が在籍していて、先生たちはどう接しているか、必要なサポートを受けられるのかを必ず確認しましょう。
個人的には何かしらの障害を抱えている生徒ほど救いたいと考え、興学社高等学院では社会的自立を促すために就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、地域活動支援センター、自立訓練施設とも連携しています。学校卒業後の進路先を確認することでも、その通信制高校が発達障害や知的障害の子どもに対してどう向き合っているのかわかります。相談した通信制高校によっては対応できないと断られるケースもあるでしょうが、一度断られたからといって諦めず、生徒と保護者が納得できる学校を見つけてください。
興学社学園グループ / 通信制高校部門「興学社高等学院」/ 放課後等デイサービス・児童発達支援「わくわくクラブ」
校長 特別支援教育コーディネーター 行動心理士
佐藤 純平