データで見る中卒と高卒の違い

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「中卒」「高卒」と一口に言っても、皆さんはその違いを本当にご存知でしょうか。実際に中卒と、高卒で社会に出るのでは、生涯賃金や社員比率など将来的に大きな差が出てしまうとも言われています。卒業後における生涯賃金や正社員の割合など、公的なデータを通して「中卒と高卒の違い」について、具体的に学んでいきたいと思います。

中卒と高卒の生涯賃金の差は約2千万円

そもそも、高校を卒業する意味はあるのでしょうか。中卒と高卒の格差については、厚生労働省と関連法人のデータを見ていくことで、その実状を読み取ることができます。

まずは、生涯賃金の差を見てみましょう。独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「ユースフル労働統計2020」によると、男性のみのデータですが、中卒で約2億3千800万円、高卒で2億5千700万円と、約2千万円の差があることが示されています。(参考:ユースフル労働統計2020 https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2020/documents/useful2020.pdf

約2千万円という金額は、それほど大きな差ではないと感じる人もいるかもしれませんが、この生涯賃金データは、正社員として定年まで働き続けた場合の比較です。実際には、中卒後に正社員として働き続ける人の割合はかなり低いため、生涯賃金の差はさらに大きく広がることになります。目安として、中卒者がフルタイムの非正規雇用(パート・アルバイトなど)として60歳まで働いた場合の生涯賃金は、男女平均で1億2千100万円です。高卒で正社員として働き続けた場合との単純比較はできませんが、数千万円の差が開くことが分かります。

中卒者の約40%しか正社員になれないという現実

実際に、正規雇用の割合は、中卒と高卒でどのような差があるのでしょうか。厚生労働省「平成28年 賃金構造基本統計調査」によると、中卒の場合は正社員が37.5%、非正社員が62%、高卒は正社員57.1%、非正社員42.8%で、中卒と高卒の正社員比率は、約20%の開きがあります。男女共に、中卒後に正社員として働く人の割合は約40%で、そのほかは非正規雇用として働いています。

正規雇用の割合(中卒と高卒)

このように、多くの中卒者は非正規雇用で働いているため、生涯賃金においても、前項のデータ以上に大きな差が広がることが分かります。

高卒以上が条件の資格は多数

条件の良い就業先を目指すには、専門的な資格を取得するという道がありますが、その多くは高卒以上でないと取得が難しいことも事実です。高卒以上の学歴が必要な資格としては、下記のようなものがあります。

高卒以上が条件の資格
  • ・栄養士、管理栄養士
  • ・歯科衛生士、看護師(または准看護師)
  • ・臨床心理士
  • ・理学療法士
  • ・美容師免許(中卒の場合、通信過程3年以上を終了することが条件)

学歴不問で取得可能な資格では、3~5年以上の実務経験や、それに加えて養成機関での学習が必要というケースが一般的ですが、実際に中卒者が採用され、現場で実務経験を積むことは、高校卒業と同程度、もしくはそれ以上の努力が必要かもしれません。

専門学校や大学に進学するためにも、高卒資格の取得は必須です。

求職時においても、多くの企業が正社員の応募条件に「高卒以上」を掲げています。高校3年間は、社会に出るための重要な準備期間であり、高校を卒業した人材が「一般的な社会常識や、基礎知識を身に付けている」と判断されていると考えられます。

通信制高校3年間の費用は?

通信制高校に通うためには、どれくらいの費用が必要か、気になる方も多いでしょう。公立に通う場合、年間で約3万円、3年間では約10万円の費用が必要です。私立では、自宅学習が中心のコースだと、3年間で40万円以上、通学学習のコースは、100万円以上が必要な学校もあります。

もともと通信制は、金銭面や家庭の事情などで、学業の習得が難しい人に向けて設立されたという経緯があるため働きながら通うことができ、特に公立は費用が安く抑えられています。

公立と比較すると私立の費用はかなり高く感じるかもしれませんが、通信制高校も全日制高校と同じように世帯年収に応じて就学支援金が適用されます。

就学支援金
世帯年収 適応範囲 授業料の負担
590万円未満 25単位で20万円支給 年間授業料が20万円以下なら実質無料
590~910万円 1単位につき4,812円(定額)引かれ、差額が自己負担 1単位の授業料が7,000円なら2,188円が自己負担、25単位の場合は54,700円を負担
1単位の授業料が7,000円なら2,188円が自己負担、25単位の場合は54,700円を負担 就学支援金の対象外 全額自己負担

1単位の授業料は7,000~12,000円で、年間で25単位を修得する場合は175,000~300,000円の授業料となります。そのため、「世帯年収が590万円未満」で「年間授業料が20万円以下」なら私立の通信制高校でも授業料は実質無料です。

費用面では、公立に通う方がメリットが大きいかもしれません。しかし、学習に関しては必要最低限のサポートしか得られず、私立なら一人ひとりに合った適切なサポートは受けられます。通学しないコースでもオンラインでレポートの学習や提出がしやすいなど手厚いフォロー体制が整っているので、自学自習に不安があるなら私立を検討した方が良いでしょう。

また、全日制高校に通っていて退学してしまった場合は、在学中に一定数の単位を取得しているため、1年次から入学するより、卒業に向けた費用を安価に抑えられます。

まとめ

中卒と高卒は、単純なイメージの違いだけでなく、生涯賃金や正社員比率、そして資格取得の面においても、大きな差が開くことがご理解いただけたでしょうか。大人になり、活躍していくためには、高卒資格を取得した方が有利かもしれません。通信制高校であれば登校日数を抑え、レポートを中心とした自学自習で勉強を進めることができます。さらに、私立であればオンラインでのサポートも充実しています。今の生活を保ちながら高校卒業という目標がぐっと近付きます。社会に出て後悔しないためにも、しっかりとした進路選びを進めていきましょう。

岩田 彰人
教育メディア

株式会社プレマシード

教育メディアクリエイター

岩田 彰人

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